先輩たちがその時代に携わってきた膨大な数の仕事、それが書籍やレコード、CDという商品となり、形を残しました。それが職場の棚に所狭しと並べられていたのを今も覚えています。当初このような教材は、優秀な演奏家を集めてレコーディングされていましたが、時代と共に、また、コストや手軽さの面からそれらはMIDIへと置き換えられていくことになりました。例えばギター教則本のお手本演奏を作るなら、ギター以外のトラックは殆どがMIDIによる打ち込みとなり、MIDIデータにはより本物らしさが求められました。

MIDIによる本物らしい再現には、演奏の知識とソフトの扱い方が重要な要素です。そして音にまつわる全てを判断できるのはやはり自分の耳だけでした。耳が自分の仕事を支える核なのです。出来上がったものを一聴しただけで「似てる」「凄い」「本物みたい」と言わしめることが出来る、それは精度の高い耳のなせる業であることは言うまでもありません。当時そのような優秀な仕事を目の当たりにするたびに思った事と言えば「この業界は耳が命である」ということでした。その事は逆に「耳さえ鍛えれば何とか生き残れるかも」と自分に思わせてくれました。以来今日までその思いが自分の中に根付いています。耳を鍛える事は言わば生き残りを掛けた闘いでもあります。

上記のような書籍やレコード、CDを製作する仕事は殆どが音楽出版社の下請け業です。高いレベルでの採譜力やギター・テクニック、再現性などを武器にどれほど多くの質の高い仕事をこなしてきたのか、その技術は少しずつ後輩たちへと受け継がれギター教則業界の枠を超えて様々な分野に広がっていきました。

当の私もその恩恵にあずかって今も尚そこから派生した仕事を生業にしているのです。先輩たちが発展させて繋いできた優れた仕事の数々に感謝です。

但し、ギターの事に精通しているとは言え仕事に求められる技術はとても幅広い。採譜者として、講師として、録音や機材の知識・技術などなど、優れた人材を集めたとしても分野によって得意不得意はあるのです。人前に出るのが好き嫌いといった性格の影響、依頼する側される側の関係、仕事のし易さ、様々な要因によって人選は左右されていく。

いずれにしても仕事を幅広くこなしていく上で身に付けておくべき知識や技術、ノウハウはできるだけ多い方がいい。私の場合その1つにMIDIがあります。もちろん刻々と変化する時代に対応することも求められる。勉強を怠れば仕事などすぐに途絶えてしまう。そんな闘いの日々が延々と続くのはとても大変なものですが、それもまたこの業界の面白さ、醍醐味なのです。何より音楽は楽しいのです。楽しいことを仕事にするというのはそう言うものではないでしょうか。

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